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 沼田まほかる の記事一覧
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『猫鳴り』 沼田まほかる 双葉社 
2007.10.17.Wed / 17:41 
猫鳴り猫鳴り
(2007/08)
沼田 まほかる

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  ★★★★☆
 
 沼田まほかる待望の第3作。

 泣いた。涙がぶわっと出てきてどうしようもなかった。老猫を看取る話だ。そりゃあ、悲しいのは当たり前だ。誰だって最期の姿には泣けてくる。だけど、そういうお決まりのお涙頂戴の薄っぺらな話なんかじゃなくて、なんというか、自分の人生の幕引きを考えずにはいられない話だった。

 猫の小説だった。と言えれば簡単なのだが、実は意外と文学的であり、奥が深いのである。三部構成になっていて少女や少年も登場してくるが、主役はやはり猫である。と言うとやはり猫中心の話なのか、と俯きそうになるが、そう単純ではなくて、第一部と第二部で、この猫を通してみたときの登場人物の心情が細やかに描き出されているのである。 

 それは例えば、人の嫌らしさとか、対人関係の疎ましさとか、己の絶望感とかである。こういう負の感情を曝け出し、なんとも複雑でもやもやした気持ちを抱かせてくれるのだから、沼田の小説はやっぱり面白い。

 結婚17年目にしてやっと授かった赤ん坊を亡くした女が、ミーミー泣いて慕ってくる仔猫を何度も何度も捨てにいく話や、登校拒否の中学生男子が、ぺたぺた歩く可愛い幼児がペンギンみたいで気に入らないからと、ナイフで刺し殺そうとする、思春期特有のブラックホールの話である。と一転して、第三部では、老人が老猫を看取るという、切なくやるせない優しい気持ちが、紙面いっぱいに溢れているのである。

 それはおよそ、猫を通してだったが、延命処置に対する葛藤とか、ついては自分の死をどんなふうに迎えたら良いのかを、深く自問自答する話だった。それを、どこまでもどこまでも優しさ溢れる言葉で濃密に描き出してくれていたのだった。
 
 正直に言えば、第一部と第二部は決して楽しい話ではない。嫌悪感さえ抱くのである。なんだってここまであからさまに、無防備に近づいてくる愛らしい仔猫や幼児に対して攻撃的な態度をとらないといけないのか。全く理解できないのである。要は、読んでいて面白くないのである。しかも尻切れトンボの感もあって不満だけが残るのである。ところが第三部が終わってみれば、それまでの嫌な話だった第一部と第二部が、なんて緩やかで生命力の溢れる話だったんだろうと思えてしまうのだから不思議だ。これには驚いた。それほどまでに老猫を看取っていく話は、色々と考えさせられるのであった。

 やはり沼田まほかるはすごかった。

 猫好きの方にはとくにお薦め。
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『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる 新潮社   
2005.03.15.Tue / 17:44 
九月が永遠に続けば九月が永遠に続けば
(2005/01/26)
沼田 まほかる

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  ★★★★★

 著者は56歳の女性で、これがデビュー作だと訊いている。表紙カバーは何かに追われるようにしてどこかへ逃げていく絵だ。題名からして救いがないような気がする。

 頁を開いて読み始める。そして、あまりの巧さに仰天してしまった。そのまま一気に引き込まれ、気がついたら夜が白々明けて新聞屋のバイクの音が聞こえてきていた。

 本作は第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品である。

 冒頭、離婚暦のある、高三の息子がいる41歳の女、佐和子が情事を終え、男の車から降り、ありふれた日常に戻っていくシーンから始まる。

 頭の中で常に、著者が56歳と意識をしていたせいか、56歳が描く41歳の女の情事がどんなものか興味があった。これが抜群に巧い。

 主婦の日常の感覚と、そこから隔てられた別世界の出来事が違和感なく重なってくるのだ。スーパーマーケットに入り、夕飯の買い物をする。日常生活に戻り、母親に返っていく。

 物語はまだ何も起こっていない。だが、何かが起こりつつある予感がしてくる。
「トマトの輪切りにベーコンと玉ねぎのみじん切り」をはさんで揚げたもの。それに、パセリのみじん切りふりかけていただくシーン。涎が出そうに美味しそうなのだ。高三の息子が嬉しそうに食べる。平和な家族の食卓である。

 その息子がサンダル履きでごみを捨てに行ったきり、帰って来ない。理由が判らない。不安がどんどん増してくる。物語は、ここからラストまでの5日間が描かれる。
 主人公・佐和子の不安、哀しみが、ひたひたと押し寄せてきて、読んでいる間中、胸が苦しくなってくるのだ。
 何かがおかしい。これは普通じゃない。全てがおかしすぎる。戦慄が生まれ、疑惑が這い登ってくる。そういう佐和子のどんな感情も読み逃さないという想いで、家事や雑用の何もかもをほったらかして貪るようにして読んだのだった。

 私たちが普段、自分とは絶対関わらないであろうと思う異常な出来事が、また人物がこの作品を通してリアリティを持って迫ってくるのだ。これこそ小説だという一冊である。
 ラストは、またありふれた日常に戻っていく。和やかで、ほっとするシーン。思わず、くすっと笑ってしまった私がいた。

 お薦めです。
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