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 吉田修一 の記事一覧
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『元職員』 吉田修一 講談社 
2008.12.02.Tue / 14:30 
元職員元職員
(2008/11/05)
吉田 修一

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 巧いんだろう。たぶん。だけど本音を言わせてもらえるのなら言うが、どこを切り取っても面白いところは、ない。公金を横領しておいて、まんまとこのまま逃げきれるはずがないじゃないか。そんな主人公の能天気な厚顔無恥さに吐き気を覚えた。だからか。バンコクの描写はそれなりに美しいが、そうやって振り返るせいか、それまでもがだんだんと色あせて、しだいに薄っぺらいものとしか見えなかった。『悪人』『さよなら渓谷』に続いて、犯罪者の3部作として上梓したのなら、この作品はひどくつまらないものに思えた。
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『静かな爆弾』 吉田修一 中央公論新社 
2008.03.26.Wed / 12:00 
静かな爆弾静かな爆弾
(2008/02)
吉田 修一

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  ★★★★☆

 テレビ局でドキュメンタリー番組の制作している「俺」は、閉門しようとする公園で、ひとりの女性と顔見知りとなる。その女性は音のない世界にいた。いつしか彼女と恋人になり、音のない世界の住人がどういう在り場所にいるのかという驚きと心配をよそに、「俺」と彼女はメモ帳を介して会話をしていく。そんな緩やかな日常と並行して、バーミヤン渓谷の大仏破壊の真相を追っている「俺」の仕事は苛烈さを増していった。それゆえ「俺」は、彼女への気配りが後回しになり、気づいたときには、彼女からの連絡が途絶えていた。

 『悪人』から漂ってくるほどの激情は、本書にはない。しかし、本を閉じるとき、一片の言葉が棘となり、静かに静かに胸に突き刺さってくるのだった。なぜ本書を書いたのか、あるいは書かずにはいられなかったのか、静かな感動が押し寄せてくるのである。それは単に、耳の不自由な者との恋愛小説として本書があるわけではなかったからだ。「言葉」の必要性、役目、それをふたりの日常から、そして大仏破壊の真相を考えているうちに自ずと気づかされるのである。

 最初は、なぜ恋愛という甘い話のなかで、アフガニスタン・タリバン政権による大仏破壊の真相を追うなんて話が挿入されているのかと訝った。状況はわからないのだが、何度も何度もしつこく出てくるのだから、何か意味があるのだろうとは思ってはいた。もちろんそれは、仕事が忙しくなって恋人との関係がぎくしゃくしていく状況を表していたのだと判る。と同時に、最小限の言葉だけで相手を理解することがいかに大変なことであるのか、そして言葉というものがどれほど大切なものなのかを知らせてくれたのだった。伝わらない思いが鬱屈して溜まっていくのは、もやもやとした気持ちだけが残り、泥が胸に溜まっていくようで、誰においても悲しいことなのである。

 大仏破壊のニュースを見たとき、もったいないなと思った。なんでこんな無駄なことするのかと。しかし、なぜタリバンが国際社会を無視して大仏爆破を決行したのか、その暴挙の意味を深く考えることはしなかった。それはアフガニスタンという国に対して無関心だったからだ。だから、そこで何が起こっているのか真剣に考えることはなかった。無知は恐ろしいし、無関心というのは、どんな状況においても危ういものなのである。それは、その半年後に起こった9.11同時多発テロ以降世界で起こったことを考えてみれば、推して知るべしなのである。蜜月の恋人でさえ、言葉が足りなかったり、伝える努力を怠っていたら、その関係はあっという間に足元からがらがら崩れ落ちていくのだ。異なる文明で生きる人々に対して「無関心」にならないというがどれだけ大事なことであるのか、この小説を読み終わって感じたことである。

 お薦め。


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-「静かな爆弾 吉田修一」(粋な提案)
『初恋温泉』 吉田修一 集英社 
2006.07.21.Fri / 21:14 
初恋温泉初恋温泉
(2006/06)
吉田 修一

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  ★★★★★

 舞台は、非日常的な空間である温泉宿である。ただそれだけでいつもとは違った感情が芽生えるものであるが、離婚を決めた二人にとってこの温泉宿はどういう意味をもつのであろうか。湯船の中で語るふたりの言葉に、こちらまで長湯でのぼせるような気分を味わう「初恋温泉」であった。この表題作が抜群に良い。吉田修一の力量からいえば、これくらいの作品は描いて当然であろうが、それにしてもこの静謐な文章から紡ぎだされる静寂な空気には感動してしまう。周りの音が止み、ただただ物語の世界に浸れる幸せは何物にも代えがたい。

 他に「白雪温泉」「ためらいの湯」「風来温泉」「純情温泉」がある。さまざまな年代の温泉旅行。温泉はやはり男女で行くほうがしっくりくるような気がする。湯にゆっくり浸かり、美味しいものを頂いて、日頃の不満や疲れを癒してゆく。湯にさざ波が起こるように男と女の気持ちのなかにもさざ波が起こる。少し世俗から離れて別の空間に行けば、また違った気持ちも沸き起こるであろう。

 構成もまた一段と素晴らしい。高校生カップルを描いた最後の「純情温泉」。ずっと君一筋だ、と永遠の愛を誓った男は、さて本当に将来いつまでもひとりの女を愛し続けることができるのであろうか。最初の「初恋温泉」を再読してみると面白い。

 きっとお気に入りの作品が見つかると思います。

 お薦めです。
『女たちは二度遊ぶ』 吉田修一 角川書店 
2006.07.04.Tue / 21:20 
女たちは二度遊ぶ女たちは二度遊ぶ
(2006/03/25)
吉田 修一

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  ★★★★

 女という字がつく十編の短編と「最初の妻」という一編を含む短編集。

 「本当になんにもしない女だった。」という書き出しで始まる「どしゃぶりの女」で、ドキッとして思わず我が身を振り返った。まさかわたしのことを言ってるんじゃないでしょうね、と思ったが、次の「炊事、洗濯、掃除はおろか、こちらが注意しないと、三日も風呂に入らないほどだった。」とあったので、さすがにここまでは酷くないので心配は杞憂に終わった。というように、自分だったらと考える部分をちくちく出してきて読者の心の奥底にある感情を引き出してくれる。

 男が皆、頭の悪そうないい加減な若者ばかりだったのがある意味すごい。そこに絡む女がまた何を考えているのか分からなくて日々流されている奴ばかりだというのが、これまた感心してしまう。体の関係はあるのに全員恋愛をしていないというのも立派としか言いようがない。とまあ、これだけ無味乾燥な登場人物を揃えてきているのに、文章の巧さと男女の間に流れる空気によって清涼な憂愁がものの見事に浮き上がってくるところが堪らない。ずっとこの空気に浸っていたいし、この先も読みたいという気持ちを残したまま、フッと消えるようなラストも素晴らしい。

 気怠いような不思議な余韻を残す短編集であった。
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