ADMIN MENU ≫ | IMAGE | WRITES | ADMIN
 桜庭一樹 の記事一覧
スポンサーサイト 
--.--.--.-- / --:-- 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
『私の男』 桜庭一樹 文藝春秋 
2007.11.09.Fri / 13:36 
私の男私の男
(2007/10)
桜庭 一樹

商品詳細を見る

楽天で詳細を見る


  ★★★★☆

 傑作、なんだと思う、たぶん。誰もがそう言うのだろう、きっと。だけどこの本が好きか嫌いかと聞かれたら、即答できる。わたしは嫌いだ。悲しいから。

 近親相姦に嫌悪があるかもしれない。閉じられた狭い世界に不満があったかもしれない。だけどそんなものを乗り越えて眩いばかりのきらめきを放っていた本書は、終盤あっけなく終わってしまっていた。自分の知りたいと切望したことが何一つして書かれてなかったのだ。あくまでも優しい。だけどそれは、悲しいこと。そしてだからこそ多くの人に読んでほしい、とも思う。

 9歳と25歳で出会った少女と男は、養子縁組をして親子になった。一緒に暮らして15年。明日は、娘・花の結婚式だ。父・淳悟は言う。「けっこん、おめでとう。花」と。「私の男」は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。2008年の梅雨時の6月のことである。

 この物語は、暗い穴の中に落ち込んでいった父娘の話である。全編を覆っているのは、人間として越えてはならない一線を越えてむさぼりあい、魂の片割れとなった二人がどこまでも堕ちていく話である。なぜこんなことになったのか。二人は世間の目から逃れ、アパートの一室で息苦しくも淫靡な生活を行う。押入れの中には腐ったモノがビニールに包まれて押し込められているように、その関係は、腐りかけた果物のように匂いたち、男の匂いと女の匂いが文中からゆらめいていくのである。

 少々癖のある文体からエロティックで不穏な空気が漂ってくる。カサカサに乾いた皮膚がしっとり濡れていくように、二人は喜びで満たされていくのである。だが、奪い合う性愛がいつまでも続くはずがない。二人が抱えているある事情により、心はどうしようもない哀しみで溢れていくのである。だから花は、こんな腐れきった関係から逃げ出し、まっとうな家庭を築きたいと願うのである。

 なぜこの父娘がこのような関係になっていったのか。その理由を本書は時間を遡って徐々に明らかにしてゆくのである。第1章の現在から、第2章、第3章と、だんだんと過去に遡り、最終章で震災で一人ぼっちになった花を必死で探していた淳悟にわれわれは会うのである。そしてそこで、われわれは知ることになる。やっと花に会えた、と言う淳悟がいたことを。

 震災やオホーツクの冷たい海を背景に桜庭は、絶望を、他人との拒絶を、閉じられた世界の中で描いてみせたのだ。そこには哀れみも慈悲も同情も寄せつけない強い意思があった。だけど読者は最後に知るのである。ただただ、優しい、と。
スポンサーサイト
『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹 東京創元社 
2007.03.23.Fri / 10:50 
赤朽葉家の伝説 赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹 (2006/12/28)
東京創元社
この商品の詳細を見る
楽天で詳しく見る

  ★★★★★

 傑作。
 
 昭和28年。西暦でいうところの1953年。赤朽葉万葉、10歳の夏から物語は始まる。たたらの頃より製鉄業が盛んで、神話と不思議の国でもあった、出雲の国、島根県とその隣の鳥取。ここを舞台にして旧家に生きる三代の女たちの姿が、「昭和」を知らない、若い世代の赤朽葉瞳子を通して力強く語られてゆく。
 
 すでに太平洋戦争が歴史と化し、学生紛争やオイルショックを経験していない世代がいる。あるいは日本の反映を象徴する東京オリンピックや新幹線の開通を見ていない世代がいる。日本を震撼とさせたロッキード事件を記憶していない世代もいるだろうし、つい最近のバブル景気さえ知らない世代もいるだろう。そんな様々な世代の人たちが、若い世代に絶大な人気のある、若い作家である桜庭一樹の作品を読むのである。これに殊の外、意義を感じる。胸に去来するものはそれぞれ違うであろうが、女三代の年代記を、歴史を俯瞰しながら読み進めていく楽しさは、想像以上に豊かで大きいことは確かである。そうして辿り着いた第三部の瞳子自身の話。一息ついたかと思えば、驚くことに、この濃密で鮮烈な物語がミステリ展開していくのである。その勢いは、それまでの出来事を丸め込んで一気に切なさを増してゆくのであった。
 
 第一部は祖母・万葉の話。“辺境の人”に置き忘れた幼子が、村の若夫婦に引き取られ、そして製鉄所を営む大奥様のタツに望まれて赤朽葉家に嫁ぎ、“千里眼奥様”として仕切っていくまでを描く。読み書きができないという万葉だったが、赤朽葉の人たちが疎まずに受け入れてくれ、千里眼で見た未来を役立て、赤朽葉家になくてはならない人になっていく話は、なんとも言えず胸にくるものがあり、とにかく読み応えがあった。この地に伝わるおやつ、“ぶくぷく茶”。実際にあるのか知らないが、ちょくちょく登場してくるこのお茶がこの物語に彩りを与えてくれて、ついつい話が弾んでいくのは、とにかく楽しかった。
 
 第二部は母・毛毬の話。暴走族レディースの頭として、「ぱらりらぱらりら」と爆音も小気味良く、敵を蹴散らかした青春。その後、売れっ子漫画家になって急逝した突拍子もない人生。12年以上も連載したヒット作であり、毛毬自身の青春時代を描いた『あいあん天使!』。これを読んだとき、すぐに高口里純の『花のあすか組!』を思い浮かべたのはわたしだけであろうか。とくに若い方たちは、赤朽葉毛毬の豪胆で達観したキャラクター性に惚れ込んだのではないだろうか。その親友である穂積蝶子の生き様も、これまた鮮烈で異彩を放っていた。
 
 第三部は語り手である、何者でもない瞳子自身の話。派手な事件や特別な出来事があるわけではない。だが、昭和を知らない乾いた世代が、かつての活気と熱気に触れ、侠気に富んだ人を見るにつれ、何を考え感じたのかは、興味は尽きない。そして、ずっしりとした物語は、瞳子の言葉で爽やかに終幕を迎える。「ようこそ、ビューティフルワールドへ。」
 
 お薦め。
『少女には向かない職業』 桜庭一樹 東京創元社 
2005.10.15.Sat / 10:24 
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)
(2005/09/22)
桜庭 一樹

商品詳細を見る

  ★★★★★

 いい。これは、いい。めちゃくちゃ好みです。

 今回はこの★の評価とこの感想だけで勘弁してほしいと思いました。というほど、桜庭一樹を知りません。もちろん初読みです。皆さんがどうも大好きなようなので、私も読んでみました。いやあ、もうびっくり。巧いです。少女と少女の、また別の少女との気持ちの触れ合い場面なんて巧すぎて、うれしくなってきました。

 桜庭さんて、女性なんでしょうか。とにかく、思春期の彼女達の不安定さがもろに表れていて、読んでいて頬が緩んできてしょうがなかったです。前半がとくに楽しい。こんなことを言うと、なんだ不謹慎な、と怒る方もいらっしゃるかもしれませんね。つまりは、そういうことです。この話は、少女には向かない殺人の話でした。

 ミステリ的には、どうなんでしょうか。謎解きを楽しむというものではないでしょうが、出だしの一文である「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」という、このインパクトある一文ですっかり気持ちは、本当に中学二年の葵は殺人を犯したのだろうかという方へ向かってしまいましたね。家族に恵まれない環境にある、痛々しい葵。その筆致は素晴らしく、殺人へと向かう気持ちが痛いほど伝わってきます。葵と、葵に殺人をけしかける、“さつじんしゃ”こと宮乃下静香。静香が言うところの、殺人に「用意するものは…」という見出しがじつにいいです。

 二人の行動が用意周到のようにみえて、意外と行き当たりばったりの様子がちょっと笑えます。ところが、このへんから事態はますますシリアスになってきて真実はどこに隠されているのかと疑うことになります。ラストについては、全くなにも言えませんが、まあ星の数で判断してもらいましょうか。

 閑話休題。

 場所が、山口県下関市の沖合いにある大きな島となっていますが、なぜか標準語を喋っています。大きな島と聞いて、私はすぐに彦島を思い浮かべました。学生時代の友人二人がこの彦島から通ってきていたのですね。この二人、なぜか美人でした。しかもめちゃくちゃ仲が良かったのです。そう、まるでこの小説の中の二人のようでしたね。もうちょっと歳がいっていましたが。勉強するという名目で家にお邪魔したこともありました。ああ、いい思い出です。
そんなことを思い出しながら読んでいると、気持ちは遥か昔に戻って、女子中高の頃の少女独特の感情を思い出しました。そんな懐かしい気持ちを思い出させてくれる桜庭一樹の文は、巧いです。もともと私は、ラノベやジュブナイルは好きではないのですが、しかも青春小説が苦手というのもあって評価がすごく厳しくなるのですが、この本はそんなことを露とも感じさせないほど素晴らしかったです。ぜひ今度こそ『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んでみようと思いましたね。

 面白かったです。
| BLOG TOP |
プロフィール

でこぽん

Author:でこぽん
 ようこそいらっしゃいました。
でこぽんです。

 このブログは「でこぽんの読書日記」のミラーサイトになります。感想文の保管庫ですね。読書通信となっていますがdollのほうがメインになるかと。なるべく多くの写真を載せていきたいと思います。画像をクリックしていただくと元の大きなサイズになります。
 それではどうぞよろしくお願いします。

 高速画像表示にするため、「広告あり」に設定しました。ちょっと邪魔ですがよろしくお願いします。2011/12/21

---------
 感想でいらした方は、カテゴリの[国内海外]の感想をクリックしていただくと日付順に表示されますので見やすいかと思います。
 でも最近は感想文は書いてないです。すみません。

---------
 カテゴリのところをちょっといじりました。
 ドールはmomoko、Misaki、Barbie、FRと分けて、それぞれの全記事が表示できるようにしました。少しは使い勝手がよくなったと思うのですが、どうでしょうか。2008/7/23

----------------
 何かありましたらこちらまで。
 メールアドレス
yokonetjp*yahoo.co.jp(*を@に変えてください。)

------------
 薔薇の黒背景は画像が綺麗に見えるので私も好きでしたが、やはりエントリ別に見るときは使い勝手が良くないようです。CSSを弄れるといいのですが、このレベルになるとさすがに勉強しないと無理なのでやめました。ずいぶん粘ってみたんですけどね。なので元に戻しました。またそのうち黒背景にすると思います。2008/09/24
------------
 そうそう。コメントは「OPEN▼」でも読めます。いちいち戻らなくてもいいので便利かもしれません。

最近のコメント
最近のトラックバック
カウンター
でこぽんの読書メーター
でこぽんさんの読書メーター
QRコード
QR
CopyRight 2006 でこぽんの読書通信 All rights reserved.
Photo material by <ivory> / Designed by Il mio diario
Powered by FC2BLOG / 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。