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『夜をゆく飛行機』 角田光代 中央公論新社 
2006.07.28.Fri / 22:51 
夜をゆく飛行機夜をゆく飛行機
(2006/07)
角田 光代

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  ★★★★☆

 真っ当な家族小説である。だが、なぜこんな回顧的なぬるま湯の小説を角田が書くのかわからなかった。きっと自分自身が幸せだと思っているから、こんなからからと乾いたような小説を書くのだろうと変に勘ぐってみたり。だけど一家のアルバムは、だんだんと私のなかに染み込んでゆき主人公と一緒に体験することになるのだった。

 主人公は酒屋の四女の里々子である。四女ということで、いつも割が合わないような、それでいて、姉たちから可愛がられているような、なんとも羨ましい立場にある。だけどよくよく考えてみれば、高校生の彼女の目を通して語られる日々は、わたしにとってはなんら真新しいことはないし、ましてや里々子にとってもそれほど楽しくて幸せな日々というわけではなかったのだ。それなのに、ぽつぽつと心に響いてくるのは、どんなに疎ましくて詰まらないことでも、
 
 それが変わらずに懐かしい日々の思い出として誰の胸にもあるからだろう。
 だが、いつまでも変わらずに続いていくと思っていた家族は、年齢を重ねていけばやっぱり悲しい出来事も多くでてくる。なかでも身内の死というものはやはりどうしようもなく辛い。でも角田はその死でさえ、しめっぽくならないようにカラっと乾いた手触りで表現していくのである。父親が親戚に知らせるのは正月三が日が過ぎてからでよいと言うのにはずっこけてしまった。いやはや、これは目新しい。

 あるいは、家族から小説家が出るとか出ないとかいう仰々しい話もあるが、御自身の体験がもとになっているようでこれまた楽しい。そうかと言えば、焼けぼっくりに火が付いた姉の話は、とたんにしんみりとして、違和感がありまくりなのにやっぱり乾いていて良い。

 だけど、そんな話も若い里々子にとってはどんなふうに見えるのだろう。果たしてこれは刺激的なことなんだろうか。彼女の淡々とした態度がことのほか新鮮に見えてしまうのである。滑稽で騒々しい出来事も、時が経てばセピア色に染まってしまうからだろう。だからこそ、そのときそのときの気持ちは泣きたくなるほど切ないのである。里々子の恋の話を読んでいると尚更そう思ってしまうのだった。恋をしている相手の男から理不尽な言葉を投げつけられる里々子。これこそ角田の小説だと思う。こんなムカつく男についていこうと思う里々子が健気である。そんな話を書く角田はやっぱり面白い。

 いつのときも変わらぬようで変わっていくのが家族である。夜の飛行機を眺めてふと思う里々子の横顔が、かつて遠い日に思っていた自分自身と重なってしまうのであった。

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