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『扉は閉ざされたまま』 石持浅海 祥伝社 
2005.06.02.Thu / 14:37 
扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)
(2005/05)
石持 浅海

商品詳細を見る

  ★★★★

 本書を開くと、いきなり殺人の犯行場面。犯人の視点で語られます。最初から犯人がわかっているという、いわゆる倒叙ものですね。

 伏見亮輔は部屋に入りドアに鍵をかけ、熟睡している新山の頭を浴槽に沈め、両手で押さえつけて殺す。浴槽を湯で満たし、服を脱がせて浴槽から足がでるようして入れる。これで薬を飲んだあと入浴しようとして誤って死んだ男が出来上がった。室内を点検してドアストッパーと施錠して部屋を後にする。

 密室殺人の完了。

 おお。これは端整なロジックに満ちた良い作品。

 石持さんの『月の扉』が大好きな方が読まれると涎ものだと思います。特殊な事情で犯行に及ぶというのは『月の扉』でもそうでしたが、今回の動機も普通の人だったら考えもしないだろうというもの。言い換えれば、そんな理由で殺しちゃうのっていう、犯行動機が弱すぎるのですね。だからといってそれが悪いというのではなくて寧ろよく考えられた設定であり、なぜドアストッパーまでして密室状態にしなければいけなかったのか、ということに繋がっていきます。動機については賛否両論があるでしょうが、伏線もきっちりとしたこの作品ならではの設定でしたので、高く評価したいと思います。

 大学の同窓会でペンションに集まった6人の仲間。起きてこない新山を、彼らは事故か急病かとその安否を気遣う。そんな中でひとり碓氷優佳だけが疑問を抱くのです。彼女は伏見がかつて夢中になった女性。賢くて、冷静で、物事に動じない、だけど冷たい、伏見とは似て非なる人物です。成功したかにみえた伏見の偽装工作をことごとく破っていきます。読者は論理に破綻がないか、優佳と一緒になって検証していくことになります。現場を見ることなく論理だけで伏見の矛盾点をついてくる頭脳合戦は、この本の醍醐味です。

 「扉は閉ざされたまま」という意味が、また動機がラストで説明されますが、伏線がしっかり描かれているため納得いく理由でした。派手な場面はないのですが、静かな緊張感が持続した良質の本格ミステリでした。

 面白かったのですが、探偵役の碓氷優佳が無気味(絶対友達になりたくない。怖いよ~)だったのと、ラストで伏見の行く末が気に入らなかったので、星の数を減らしました。

 優佳のことでもっと言えば、女性はもともと論理的思考が苦手なのですが、というよりほとんどの人が出来ませんが、優佳のようにこれほど論理的思考をもった頭脳明晰な女性が、好きだというだけでそんな独りよがりの感情を相手の迷惑も考えずにぶつけたりはしないのではないでしょうか。

 あと、これも蛇足なのですが、動線については誰もが考えることなので、というより家庭科で習ったことなので、失敗するというのは変なのです。ん?男性は習わなかったのかしら。

 とにかく面白かったです。
はてなダイアリーで頂いたコメントとトラックバックです。

[コメントを書く]
# キノ 『こんにちは。でこぽんさん。
私も動機は弱いよなあと思ったんですが密室にしなければならない必然性がすごいと思いました。
優佳は絶対友だちになりたくないですよね。』

# でこぽん 『うわあー!キノさんだぁ!
ありがとうございますありがとうございます。
リンクまで貼ってTBしてくださって感激です。

おお。キノさんが最高点を付けていますね。うん。面白かったですよね。
動機は、まあいいでしょう。それより「密室にしなければならない必然性」が素晴らしかったですよね。いや思わず膝を叩いて感心仕切りでしたよ。
優佳はやっぱり頭が良すぎて可愛げがないんですね。キノさんがおっしゃるように「優佳ってかわいいけどちょっと怖いとこあるよねえ、なんて噂されてそう。」っていうのに一票です。
それはそうと、キノさんのところではコメント欄をはずしちゃったようで、ちょっと寂しく思っています。こんなことならもっと書き込んでいたら良かったなあなんて後の祭りです。』

# キノ 『コメント欄はずしちゃったのすみませんです。
人のとこに書き込むのは好きなくせに自分のとこのはどうも面倒なんですよ。
でもやっぱ復活させようかなとでこぽんさんにいわれて揺れてしまいます(笑)』

# でこぽん 『ああ、キノさん。またまた、ありがとうございます。
ぜひぜひコメント欄を復活してください。ちょくちょく書き込ませていただきます。だって、キノさんのレビューはものすごく的を射てるんですもの。お願いしますね。』

# ココ 『ちょっとお久しぶりです。こんにちは。自分の感想を書いてからでこぽんさんの記事を拝見して、犯行動機と密室状態の必然性について自分が何も考えていなかったことに気づきました。そこはもっと評価するべきだったなーと。石持さんて巧いとは思うのですが、私はどうも苦手らしいと今回判明してしまいました。あ、でもおもしろく読みましたけれども(笑)。』

# でこぽん 『ココさん、こんにちは。ほんとなんだか久しぶりですね。
ココさんのレビュー拝見したら、リンク貼ってくださっていて、しかも素敵な感想なんておっしゃっていただいていて…ぎゃあー、穴があったら入りたい。
あ、とりあえずコメントしてきました。

石持作品はミステリファンには絶大な人気がありますよね。実を言うと『月の扉』はあまり好きではないのです。これもやはり動機という点が引っかかっていました。ただロジックはいつも素晴らしいと感じています。今回も動機とかちょっと不満がなかったわけではないですが、とても良く出来た作品だったと思います。』

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「扉は閉ざされたまま」石持浅海
石持浅海 『扉は閉ざされたまま』

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