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『アンボス・ムンドス』 桐野夏生 文芸春秋 
2005.10.25.Tue / 13:33 
アンボス・ムンドスアンボス・ムンドス
(2005/10/14)
桐野 夏生

商品詳細を見る

  ★★★★★

 さすが悪意を描かせたら天下一品の桐野夏生です。その冴えた筆致は素晴らしい。ひょっとしたら誰もが思い当たるかもしれない、胸の奥にしまい込んでいる無意識の憎悪。それをじわじわと出してくる想像力には参りました。読み始めたら、胸の奥がぞわぞわとしてきて、目が離せなくなってしまい、気がついたら貪るように読んでいました。

 オール讀物等に6年間にわたって書かれた7つの短編が収録されています。

 主人公は女。幅広い年代の女性が登場してきますが、心の奥になにがしかの不満を抱えている女たちばかりです。桐野氏は、内面の描写が素晴らしいのは言うまでもないのですが、外見の美醜のリアリティには唸るものがあります。しかも今回は、外見と性を併せて描くことで、結婚生活やセックスに対する考え方をあぶり出しているのが凄かったです。

 臭いと言われながら、おどおどと常に人の目を気にしながら働いている、汗っかきの太った女が出てきます。家に帰っても、兄嫁らに占領されている狭い家では、寛ぐことも出来ない。キスもセックスもしたことがない彼女は、こうして一日が過ぎてゆくことに焦りを感じ、鬱憤は日々溜まっていきます。しかし彼女は思い出したのです。昔、ある事件に関わっていて、自分が世の中の中心であったことを。

 他人が自分をどう見ているのか。それは誰しも気になるところです。不細工で取り柄がなくてお金もなくて、ないない尽くしの自分は一体どうすればいいのだろうか。桐野氏の小説を読むと、自分の内面が引きずり出されてくるようでギョっとします。まあ、これが快感といえば快感になるのですが。

 男の主人公もいました。若くしてホームレスになってしまった彼。気弱な性格で、猫にも相手にされない男だが、やはりセックスはしたいという厚かましい奴。でも運よく、ちゃらんぽらんな宿無しギャルとやることが出来ても、もやもやした気持ちが晴れることはない。まあそれは、そんなもんでしょう。日がな一日、睨まれながらも図書館で過ごす彼は、一体どこへ向かうのでしょうか。ホームレスと図書館。う~ん、本読みにとっては他人事ではないですね。

 のんびりしたセックス描写と思っていたら、そのものズバリの内容もありましたね。これはもう読んでからのお楽しみですが、いやはや度肝を抜かれました。いい歳をした女三人による打ち明け話ですからそれはもう恐れ入りました。三人が三人とも揃って凄い内容でしたが、その中でも、最後の彼女の話には、引っくり返りそうになりました。

 そうそう、長い間不倫をしている女が、なんでこの私がこんな目に合わなきゃいけないのよ、と開き直る話もありましたね。
 もう一つ不倫の話があったのは偶然でしょうか。

 その中で、私が最も好きだったのが「浮島の森」です。
 これは秀逸です。

 幸か不幸か、作家の娘に生まれてきて、そしてまた幸か不幸か一緒に暮らせなくなり、達観しているようで諦めきれない様々な想い。その葛藤はいかほどのものか。
 まさに我を忘れてのめり込む様にして読みました。文学史上において有名な事件を下敷きにして作られた作品です。

 表題作の「アンボス・ムンドス」もモデルとなった事件があったようですが、桐野氏にかかると違った側面からみせられ、小学生の複雑にして奇怪な思惑にゾッとしてしまったものです。
どの作品も素晴らしくて満足して読み終えることができました。
[コメントを書く]

# magurit 『 こんにちは。先日は,丁寧なコメントありがとうございました。この本,題名から面白いかも?と入手したのですが,読み始めることができないまま,積まれつつありました。早速,読みたい(苦笑)と思います。ありがとう。』

# でこぽん 『maguritさん、こんにちは。
またお越しいただき有難うございます。
maguritさんが『アンボス・ムンドス』をご購入されているのを見て嬉しくなっていたのですが、そうですか、まだ積んでいましたか。それは是非お読みください。
「アンボス・ムンドス」は響きがいいですよね。男女ふたりが泊まったハバナのホテルの名前です。意味は、「両方の世界」「新旧ふたつの世界」というもので、出来ればお互いの関係が響きあって存在する世界があればいいなと思うのですが、果たしてこの二人は…ということで、楽しまれてくださいね。』


トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yookoo/20051025/1130250565
◎「アンボス・ムンドス」 桐野夏生 文藝春秋 1365円 2005/...
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