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『魔王』 伊坂幸太郎 講談社
![]() | 魔王 (2005/10/20) 伊坂 幸太郎 商品詳細を見る |
★★★★★
これは傑作です。
とくに「魔王」は、伊坂幸太郎の最高傑作です。
「魔王」と「呼吸」の二つの中編からなってきます。「魔王」のまるでこちらに対決を迫っているような圧倒するほど読み応えのある作品と、それとはまるで正反対のように適度に肩の力が抜けた「魔王」の後日談である、清々しい作品の「呼吸」。
「魔王」は、他人の言葉を操れる腹話術を持った超能力者がファシズム政治と戦う物語。
と言うと、なんとも荒唐無稽な物語のようですし、政治色の強い話のように思われるのですが、これが抜群に面白い。腹話術のように自分の言いたいことを相手に言わせることが出来る超能力というのがいいですね。こんな状況になったら自分ならこんな風に言うのに、と思うことはよくあるでしょう。吃驚するほどの思わぬ効果があって、周囲は呆然唖然となったりして、そんな反応が愉快なんですよね。この力を持ったのが、学生の頃から政治や未来について考えていた若者。日々ファシズムについて考えている彼は、世の中がそれに向かっていくのを恐ろしいと思う。では、彼はその恐怖政治を阻止することができるのであろうかと、じわじわとその恐怖心がこちらに迫ってきて、読んでいるとだんだんと息苦しさを覚えるのです。
日々流されるままに一日を送っている身とすれば、超能力者の彼がつぶやく「考えろ考えろマクガイバー」と繰り返す言葉はガツンと響いてきて、重くのしかかってきます。
私は、伊坂作品の軽妙洒脱だけど何を言いたいのかよくわからない作品が嫌いでした。
が、そういうのを取り払った、こういう心の中にストレートに伝わってくる骨太な作品はかなり好きです。読み終えるのが勿体ないと思ってじっくりと時間をかけて読んだ作品は本当に面白かったです。何度も繰り返す言葉はとても印象的であり、それに伴って間に挟まれる宮沢賢治の詩がとても巧い具合に染み込んできて、心を揺さぶられるのです。途中途中で色々と考えさせられることもあり、これがまたこの読書を単に息苦しいというだけではなくて楽しいものとしてくれたのが嬉しかったです。
伊坂幸太郎には是非これで直木賞をとってもらいたいです。
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追記
忘れてましたが、これだけは言っておきたいです。装幀がダメダメです。どうしてシューベルトの『魔王』のように重々しいものに出来なかったのでしょうか。子供が考えたようなこんな軽い表紙に、もうガッカリです。それともブルーの円は青空を表しているのでしょうか。そして、魔王の白地は雲ですか?
追追記
そういえばあの人が出てきましたね。ほら、時折、会話が噛み合わなかったりするんだけど、音楽の話になると妙に目を輝かせて熱心に語る、あの人です。伊坂さんはこういうのをちゃんとやってくれるから好きです。
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# chiekoa 『わぁ!でこぽんさんと同感です!なんかうれしい…。私はこの本が今のところ伊坂さんのベストなんですけど、他の人の感想とか読んでると、なんか普通みたいで…。えー!すごくよかったのに!と。直木賞、これで獲ってくれたらほんとうれしいです。でもそういう話題に全然なってない…。なぜかしら?!装丁については同意見です。なぜこんなことに(笑)。珍しく買ったのに!(しかもサイン入りを…)。だってめちゃくちゃ好きだったんですもの!でも私が読んだとき(エソラ掲載時)に加筆されてる部分もあるみたいなので、単行本も読んで見ます!(←買うだけ買ってまだ読んでいません(笑))』
# でこぽん 『あ、ちえこあさんも同じ意見ですか?
本当に嬉しい。。。
他の方の感想はあまり読んでいませんが、そうですか、あまりよく思ってないのですか。
それは残念です。
でも誰が何と言おうともこれが伊坂さんの最高傑作と思っています。はい。
それほど衝撃的でした。うんうん。
直木賞はこれでしょ?もう決めています。
装丁については、もう憤りさえ感じています。
この傑作作品に手を抜いたとしか思わんばかりの装丁はないでしょう。
単行本を読んだらまた感想を教えてくださいね。』
# snowkids99 『ぼくもこの作品、すごく響いていて、書評が書けない(まとめられない)状況です。この、全体主義への恐怖って、あの「はみだしっこ」から学んだぼくの生き方のようなものでもあり、作品単独で評価できない、でも個人的に伊坂のベストには同意!再読して、書評に挑戦してみます。』
# でこぽん 『すのさん、こんにちは。
「衝撃的」だったようでなんだか嬉しいです。
『はみだしっ子』はまだ入手できていません。どんな風に衝撃的だったかはわかりませんが、『はみだしっ子』をあげられるくらいですから、相当なものだったのでしょうね。
すのさんの「伊坂のベスト」だという言葉には力が湧いてきます。うれしい。
全体主義への恐怖も含めて是非書評を書いてくださいね。』
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