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『最愛』 真保裕一 新潮社 
2007.03.11.Sun / 23:17 
最愛最愛
(2007/01/19)
真保 裕一

商品詳細を見る

  ★★

 勤務小児科医の押村悟郎のもとへ、ある日、警視庁から連絡が入る。18年前に別れたまま音信不通だった二歳上の姉の千賀子が、頭に銃弾を撃ち込まれ、右半身も重度の火傷を負い、意識不明の重体で救急病院に運ばれたのだという。暴力団がらみの金融業者の事務所にガソリンを持って乗り込んだと疑われている姉。なぜかその前日に婚姻届を出しており、しかもその相手の男には殺人の前科があった。姉が瀕死の重体であるにも関わらず、夫とされる伊吹は姿を現さないまま行方を絶っていた。アパートには多額の預金通帳があり、それがすっかり引き出されていた。事故か事件か。悟郎は、姉の生活や行動を調べていくうちに、さまざまな謎に出合っていく。
 
 真保はこの話を読者にどういうふうに読ませたかったのだろうか。主人公の悟郎の目を通して多くの謎を追いかけ、姉の人生に迫ることで慟哭するほどの純愛を見せたかったのであろうか。それならば、この内容では失敗だったと言わざるを得ない。本書はミステリ、というよりサスペンスの体裁をとっているが、ラストの真実に辿り着くまでがとにかく冗長すぎる。次から次に出てくる謎は興味を引くし、ぐいぐい物語の中へ引き込まれてゆくものの、その解決は遅々として進まず、ああ、また同じパターンなのかと、どうでもよくなっていく。一番の失敗は姉のエピソードである。彼女の性格や生き方は決して共感できるものではなく、無謀としか映らないのだ。だから悟郎がどんなに姉のことを凄い人だった、素晴らしかった、と語ろうとも、それは単に悟郎がそう思うだけで、読者としては白けるしかなく、これでは別れた姉弟の本当の理由が最後に明かされても感動することは出来ない。主人公の仕事を小児科医に設定したことは素晴らしいのだが、命の重みや大切さ、あるいは真実の愛を読者に納得させたいのであれば、終盤の語りだけでは不十分である。もっと余りある圧倒的な理由がなければこのテーマで書くことには無理がある。硬質であるが読者を引き込んでゆく筆力が素晴らしいだけに非常に残念であった。
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COMMENT TO THIS ENTRY
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最初はさすが真保作品.ぐいぐいと引っ張って読ませる展開です.しかし,読みすすむにつれて次第にボルテージが下がっていき,最後のオチはいただけません.

人工呼吸器につながれた患者に対して,筋弛緩剤であるマスキュラックスを投与しても何も起こらない,ということを認識しておられないのでしょうか.もしそうだとしたら,取材不足は否めません.

最近は「栄光なき凱旋」が素晴らしかったので,期待していたのですが,やはり医療物の取材は苦手なのでしょうか.次作に期待したいモノです.

あるいは,マスキュラックスの投与ではなく,塩化カリウムならば良いかもしれませんがね.

- from black jack -

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black jackさん
こちらにもコメントありがとうございます。
はい、真保さんの本はいつも読み応えがあります。ただ残念なことにこの作品に関しては少しもたついていたかなと。
すみません。マスキュラックスとか塩化カリウムとか言われてもわかりませんので。
『栄光なき凱旋』は素晴らしかったですか。読んでみたいと思います。

- from でこぽん -

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マスキュラックスとは筋弛緩剤です.あの仙台の看護師の事件で使用されましたよね.塩化カリウムもやはり大量に投与すれば,一瞬で心停止します.しかし,死因のメカニズムは全く違います.人工呼吸器につながれている患者は,心臓のみが動いているわけで,呼吸は止まっているのです.筋弛緩剤は,呼吸しようとしても,呼吸筋が動かないので,酸素不足となり死に至ります.塩化カリウムは,心筋の動きを止めてしまうので,こちらの方が直接的です.

- from black jack -

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black jackさん
たびたびすみません。
詳しく解説していただきましてありがとうございます。
…なるほど。こういうことを知っておくとサスペンスなどを読んだときにより深く楽しめますね。
これからはこういうことにちょっと気をつけて読んでみたいと思います。
どうもありがとうございました。

- from でこぽん -

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